AI時代に「読まれる」記事の作り方とは？

AIによるコンテンツ制作が急速に一般化する現代、多くの企業がその効率性に期待を寄せる一方で、その活用法に頭を悩ませています。手軽に大量の記事を生成できるようになったものの、「作ったはいいが、誰にも読まれない」「SEOで全く成果が出ない」といった声が後を絶ちません。

本記事では、長年SEOの最前線でコンテンツ制作に携わってきた水間雄紀氏へのインタビューを通じて、この課題に対する具体的な解決策を探ります。

なぜAIが生成した記事は「そのまま」では通用しないのか？

――AIによるコンテンツ制作が広がる一方で、「成果が出ない」という声も増えています。まず、その背景からお聞かせください。

「そうですね。確かにAIを導入する企業は増えていますが、“出力された文章をそのまま使うだけ”では結果に結びつかないケースが多いです。理由は大きく3つあります。」

――3つ、ですか？

「ええ。1つ目は“綺麗すぎる文章”です。AIが書く文章って、構造的にはとても整っているんですよ。内部的に英語の論理構造をベースにしているので、筋道は通っています。でも、日本語の読者にはその“整いすぎた感じ”が逆に違和感になることがある。日本語は、ちょっと崩れた表現や余白がある方が、むしろ自然に読めたりするんです。」

株式会社フォーティファイヴ　最高執筆責任者　水間雄紀

――確かに、AIの文章って「ちゃんとしてるけど、なんか冷たい」と感じることがありますね。

「まさにそれです。人の温度がないんですよね。次に2つ目、“冗長さ”の問題です。AIは与えられた指示にとても忠実なので、つい説明を長くしがちなんです。『丁寧に説明しよう』というAIの性格が出すぎて、読者にとっては“しつこい”文章になってしまう。現代の読者はスクロールも早いし、テンポの悪さは致命的です。」

――読者が離れてしまう、と。

「そうです。そして3つ目、これは最も根本的な問題ですが、“読者が存在していない”んです。AIはプロンプトをもとに機械的に文章を作るだけで、『誰に読まれるのか』『どんな気持ちで読むのか』という想像がまったくない。だから“伝わらない”。理屈は合っていても、心が動かないんです。」

――確かに、人間が書くときって無意識に読者の表情や温度を想像しますもんね。

「そうなんです。AIにはそれができない。だからこそ、“人の感情を橋渡しする編集”が必要になる。AIの出力を人間がどう整えるか、そこにこそ価値があるんです。」

――なるほど。AIをそのまま使うのではなく、人が関わる余地を残すことが大事なんですね。

「ええ。Googleも実は同じことを言っています。AIで量産した記事であっても、中身が薄く、読者に価値を与えないコンテンツは評価しない、と。要するに、“AIだからダメ”ではなく、“手抜きだからダメ”なんです。AIを使うことで“楽をする”のではなく、“より良くする”ために使うこと。これが本質ですね。」

AIコンテンツの価値を最大化する「人間のひと手間」

――なるほど、AIが生成した文章には人間の“手入れ”が欠かせないということですね。具体的には、どのような編集作業が重要になるのでしょうか？

「はい。AIが作ったドラフトを“読まれる文章”に仕上げるためには、大きく2つのステップがあります。」

――2つのステップ、というのは？

「まず“ステップ1：『日本人の脳』への最適化”です。AIが出す文章は、論理的で整いすぎていることが多いんです。英語的な構造をそのまま日本語に置き換えているため、日本語としては少し硬い。編集者の仕事は、それをあえて“崩す”こと。たとえば、接続詞を減らしたり、文の順番を変えたり、口語的なリズムを入れることで、“読むと自然に頭に入る文章”に整えます。日本語は、少し曖昧な余白があった方が伝わりやすいんです。」

――なるほど、AIが整えたものを“あえて崩す”んですね。

「そうです。そして“ステップ2：モバイルファーストへの最適化”。今はほとんどの読者がスマホで記事を読んでいます。スクロールしながら、数秒で読むかどうかを判断する。だから一文は短く、専門用語は避け、見出しや太字を効果的に使うことが重要です。1秒で理解できるレベルまで磨くことが、今の時代の“読まれる文章”の条件なんです。」

――非常に具体的で分かりやすいです。でも、そういった工夫って、“もっと読みやすい文章を出して”とAIに指示すれば、ある程度は解決できるのではないでしょうか？

「いい質問ですね。ただ、そこには限界があります。プロンプトエンジニアリングは確かに有効ですが、AIが生成するのはあくまで“プロンプトに忠実な文章”なんです。つまり、『読まれることを意識した文章』ではなく、『読まれそうに見える文章』。人が読む“体験”そのものを想像して書いているわけではないんです。」

――つまり、最後の仕上げは人間でなければできない。

「そうです。編集者の役割は単なるチェックではなく、AIの文章に“読者”という魂を吹き込むこと。AIがどれだけ進化しても、“人に伝わる”という根本の部分は人間の仕事なんです。」

――非常に本質的なお話でした。では、この編集プロセスを実際のSEO記事制作にどう組み込んでいくのか。次の章で、具体的なワークフローを伺っていきましょう。

AIの効率と人間らしさを融合させる方法

――AIを活用したSEO記事の制作フローについて教えてください。ゼロから人間が書く場合と比べて、どんな違いがあるのでしょうか？

「まず強調しておきたいのは、AIを導入したからといって、SEOコンテンツ制作の“基本的な流れ”は変わらないということです。どのSEO会社に依頼しても、本質的なプロセスは同じです。」

――本質的なプロセスというのは？

「SEO記事の制作は基本的に3つのステップで進みます。1つ目は“キーワードリサーチ”。ユーザーがどんな言葉で検索しているかを調べ、狙うべきキーワードを選定します。2つ目は“構成作成”。検索意図を分析し、読者が求める情報を整理して記事の骨子を作ります。そして3つ目が“執筆”。構成案に沿って本文を作り、具体的に情報を届ける段階です。この3つの流れは、AIを使ってもまったく変わりません。」

――なるほど、AIを導入しても“土台”は同じなんですね。

「そうです。ただし違うのは、各ステップにおける“役割分担”です。AIは“構成作成のたたき台”や“ドラフトの作成”といった部分で非常に有効に使えます。たとえば、検索上位記事の構造を短時間で分析したり、初稿を高速で出すことができる。これは大きなアドバンテージです。」

――スピードが上がるわけですね。

「ええ。ただ、最も重要な部分――つまり“戦略”の部分は、やはり人間が担うべきなんです。キーワードの裏にある『ユーザーが本当に知りたいことは何か』を読み解き、それを構成に落とし込む。検索結果を見比べ、関連キーワードを洗い出しながら、ユーザーの悩みを正確に捉える。ここがAIにはまだできない部分であり、SEOの成果を左右する“核心”でもあります。」

――AIは作業者で、人間は戦略家、ということですね。

「その通りです。多くのSEO会社が“独自手法”を謳っていますが、結局のところやっていることは同じです。だからこそ、私個人の意見としては、一定以上の知識と経験がある会社なら、最終的にはコストで選ぶのが合理的だと思っています。重要なのは手法の名前ではなく、“ユーザーの検索意図をどれだけ深く理解できるか”。それがすべてです。」

――AIとの協業によって、ライターや編集者の役割も変わっていきそうですね。では最後に、AI時代のコンテンツ制作者の未来について、どのようにお考えですか？

AIは「代替」ではなく、思考を加速させる「最高の壁打ち相手」

――AIの進化は、コンテンツ制作者にとって“終わりの始まり”ではなく、“新たな進化の始まり”だと言われます。単純作業から解放された人間は、これからどこに価値を見出すべきなのでしょうか？

「まさにそこが本質です。AIは人間の仕事を奪う存在ではなく、人間の思考や創造性を拡張し、加速させる“最高の壁打ち相手”なんです。AIに任せられる部分はどんどん任せ、人間はより高度で付加価値の高い領域に集中すべきです。」

――つまり、ライターや編集者の“役割が変わる”ということですね。

「その通りです。これからの時代に求められるのは、単なる執筆スキルではありません。大きく3つの能力が、コンテンツ制作者の価値を決定づけるでしょう。」

――その3つとは？

「まず1つ目は“戦略的編集能力”です。AIが出力した無機質なテキストを、読者の感情に訴え、行動を促す“血の通ったコンテンツ”に昇華させる力。これは、言葉を『データ』ではなく『体験』として設計するスキルとも言えます。

2つ目は“高度な問いを立てる能力”。AIに何を聞くかで、出てくる答えの質はまるで変わります。課題の本質を見抜いた上で、的確なプロンプトを設計する。あるいは、AIが思いつかないような視点を提示して“意表を突く”アウトプットを引き出す力が重要になります。

そして3つ目は“深いユーザーインサイト”です。キーワードや検索データの裏にある“人の気持ち”を読み解き、文脈として理解する力。検索ボリュームではなく、悩みの深さを感じ取る力とも言えます。」

――なるほど。AIが生み出す情報を、人間が“意味づける”時代になるんですね。

「そうです。AIがどれだけ普及しても、最終的に“人の心を動かす”のは人間です。大切なのは、AIをどう使うかよりも、“自分はAIで何を実現したいのか”を明確にすること。AIという強力なパートナーを得た今こそ、コンテンツ制作者はより戦略的で、より創造的な存在へと進化するべきなんです。」

――AI時代のコンテンツ制作は、技術ではなく“哲学”の時代に入ったのかもしれませんね。

「本当にそう思います。AIに奪われる仕事ではなく、AIと共に“拡張される仕事”を選ぶ。その意識の転換こそが、これからのクリエイターに求められる最大のスキルだと思います。」